【設例10】
次の資料に基づいて、完成品総合原価及び完成品単位原価を先入先出法により計算しなさい。
 

【手順1】仕掛品ボックス前講と同じ)

【手順2】数量の整理

途中までは、減損の場合と同じです。

材料始点投入の直接材料費は生産データの数量をそのまま入れます。

加工費は生産データの数量に、加工進捗度を掛けた数字(=完成品換算量)を入れます。

次に、本問では月末仕掛品の加工進捗度(40%)よりも手前(20%)で仕損が発生しているので、完成品も月末仕掛品もどちらにも仕損費を上乗せするので、度外視法により、仕損に「×」を付けて、仕損分の数量はなかったことにします。本問は先入先出法のため仕損も当月投入分から発生しているので、仕損分を減らしたに合わせて、当月投入分の数量も減らします。

【手順3】金額(原価)の計算

数量の整理ができたら、原価データから月初仕掛品原価と当月投入分原価を埋めます。

先入先出法なので、当月投入分原価を当月投入分数量で割って当月投入分の単価で月末仕掛品原価を計算するのですが、

当月投入分数量は仕損品の分だけ減っているので、単価が高くなります。これは仕損費が上乗せされていることを意味しますが、上乗せだけでなく、仕損品評価額があるのであれば、その分の原価調整もここで行います。

つまり、当月投入分の原価から、仕掛品評価額(@¥15/個×20=¥300)を減らします。直接材料費と加工費、どちらのボックスから減らすのか?

問題文に「仕損品の評価は材料としての価値である」とあるので、直接材料費の方から減らします。

直接材料費ボックスの当月投入分がずいぶんと込み入ってきました。

問題文の原価データから直接材料費の当月投入分は¥69,900とわかりますが、そこから、仕損品の評価額¥300(@¥15/個×20個)をマイナスして、¥69,600にしてから、仕損分調整後の当月投入数量480個で割って、単価@¥145/個を出します。これを、月末仕掛品数量に掛けて、月末仕掛品原価を割り出します。

つまり、仕損費の上乗せは当月投入の数量を減らすことで、仕損品評価額分のコスト減は、当月投入原価からマイナスすることで、月末仕掛品と完成品の両方に仕損による影響額を原価に配分していることになります。

一方、加工費ボックスの方は、仕損費の上乗せだけ、つまり当月投入の数量を減らして単価増するだけで、仕損品評価額に関しては何もしません。減損と全く同じやり方です。

あとは、借方合計から月末仕掛品原価を引けば、仕損費及び仕損品評価額込みの完成品原価が計算できます。

【手順4】直接材料費と加工費を、完成品総合原価と月末仕掛品原価に整理

【月末仕掛品原価】

直接材料費:当月投入@¥145/個×80個=¥11,600

加 工 費:当月投入@¥532/個×32個=¥17,024

月末仕掛品原価=直接材料費¥11,600+加工費¥17,024=¥28,624

【完成品総合原価】

直接材料費:借方合計104,400-月末仕掛品原価¥11,600=¥92,800

加 工 費:借方合計384,636-月末仕掛品原価¥17,024=¥367,612

完成品総合原価=直接材料費¥92,800+加工費¥367,612=460,412

(注意)仕損品評価額は当月投入原価のところですでにマイナスしているので、完成品に対しては何もしない。

【完成品単位原価】

完成品単位原価=完成品総合原価¥460,412÷完成品数量500個=@¥920.824

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