【設例8】
次の資料に基づいて、完成品総合原価及び完成品単位原価を平均法により計算しなさい。

【手順1】仕掛品ボックス

【手順2】数量の整理

【手順3】金額(原価)の計算

ここまでは、前講の場合(減損が仕掛品より後で発生する場合)と同じです。

ここからが、前講と違う解き方になります。

減損が加工進捗度30%で発生し、その後40%のところで月末仕掛品が止まっています。つまり、月末仕掛品も完成品もどちらも、減損のロスが発生した後ということです。この場合、減損費は、完成品だけでなく月末仕掛品にもどちらにも上乗せしなければなりません。

完成品と月末仕掛品両方に減損費を配分する場合、それぞれの数量の比率で配分すればいいのですが、日商簿記2級では次のように配分します。

それは・・・

減損分の数量を減らして、もともと減損分だけ数量が少なかったものとして、原価計算します。

具体的には、直接材料費ボックスと加工費ボックスどちらも、貸方の減損の部分に「×」をして、減損分の数量を無かったことにします。

このようなやり方を「度外視法」といいます。

平均法なので、借方合計:月初仕掛品¥34,800+当月投入¥69,600=¥104,400を、完成品500個:月末仕掛品80個の比率で配分します。

¥104,400に、完成品には500/580、月末仕掛品には80/580を掛けます。

「平均法のときは、借方合計金額¥104,400を借方合計数量600個で割って、平均単価@¥174を、完成品と月末仕掛品の数量に掛けるのでは?」

と思われるかもしれません。

しかし、度外視法により、貸方側の減損20個に「×」をして、無いことにしたので、貸方合計は580個です。借方合計は、本当は600個ですが、釣り合わないので、度外視法の場合は減らした貸方に合わせて、借方側も減らして数量を合わせます

そうすると、平均単価が@¥180/個になります(もともとの@¥174/個よりも6円上がりました。これが、減損費を上乗せした単価なのです)。

この減損費を上乗せした単価@¥180/個を使って、完成品と月末仕掛品の数量を掛けて、それぞれの原価を計算します。

月末仕掛品原価(直接材料費):@¥180/個×80個=¥14,400

完成品原価(直接材料費):@¥180/個×500個=¥90,000

(または、借方合計¥104,000-月末仕掛品¥14,400=¥90,000)

加工費も、直接材料費と同様に度外視法で原価を計算します。

まず、貸方側の減損6個を「×」してなかったことにします。

すると、貸方合計が532個分になります。

借方合計もこれに合わせて532個にします。

借方合計金額¥429,324を532個で割って、平均単価@¥807/個(減損費込み)を使って、月末仕掛品と完成品の数量を掛けて、それぞれの原価を算出します。

月末仕掛品原価(加工費):@¥807/個×32個=¥25,824

完成品原価(加工費):@¥807/個×500個=¥403,500

(または、借方合計¥429,324-月末仕掛品¥25,824=¥403,500)

【手順4】直接材料費と加工費を、完成品総合原価と月末仕掛品原価に整理

【月末仕掛品原価】

月末仕掛品原価=直接材料費¥14,400+加工費¥25,824=¥40,224

【完成品総合原価】

完成品総合原価=直接材料費¥90,000+加工費¥403,500=¥493,500

【完成品単位原価】

完成品単位原価=完成品総合原価¥493,500÷完成品数量500個=@¥987/個

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