前講では、変動予算を使った製造間接費配賦差異の差異分析について、計算式を使って順を追って解いていきました。

計算式を正確に間違いなく書けるようになればいいんですが、特に変動費予算の出し方など、式を間違えてしまう可能性もあります。

そこで、ここまで計算式だけで解いてきた【設例6】を、ビジュアルにグラフ(シュラッター図)を描いて解くやり方を学習します。

固定予算の場合のシュラッター図より、さらに複雑になりました。

また、シュラッター図の描き方を、順を追って説明します。

1.タテ軸・ヨコ軸

まず、固定予算の場合と同様に、タテに金額、ヨコに操業度(本問では直接作業時間)を取ります。

2.予算線のグラフ(固定予算+変動予算)

ここから、固定予算の場合と異なってきます。

グラフを描きますが、原点Oから引くのではありません。

タテ軸上、月間固定費予算額¥3,900(=年間固定費予算¥46,800÷12か月)のところから、傾き@¥10/時間のグラフをスタートします。

これは、予算額が固定費(操業度が0時間でも100時間でも同じ¥3,900)の上に、変動費(操業度1時間当たり¥10)がのっかっているからです。

このグラフ(=予算線)は、月間基準操業度130時間(=年間基準操業度1,560時間÷12か月)のところまで描きます。

3.当月実際操業度・当月実際発生額(予算差異)

問題文によると、当月の実際の操業度は125時間、製造間接費の実際発生額は¥5,500でした。

ヨコ軸上の125時間のところから、真上に棒を1本伸ばして、¥5,500のところまで引っ張ります。

こうして、予算線から飛び出した部分が予算差異です。

予算額は、今描いたタテ棒と、2.で描いた予算線のグラフとの交点ですが、いくらかわかりますか?

固定費予算¥3,900+変動費予算@¥10/時間×当月実際操業度125時間=¥5,150

当月予算額¥5,150-実際発生額¥5,500=△¥350

必ず、予算から実際を引いてください。

4.下へ延びるもう1本のグラフ(操業度差異)

再びタテ軸上の固定費予算¥3,900のところから、今度は右下に向けてグラフをもう1本延ばします。ヨコ軸上の基準操業度130時間の点を目指して。

今描いた方のグラフから、ヨコ軸上の当月実際操業度(125時間)までの間が操業度差異です。

変動費予算のグラフ(傾き@¥10/時間)と、もう1本の下に延びるグラフ(傾き@30/時間)との間に挟まれたところが、製造間接費予定配賦額です。操業度1時間で¥40、2時間で¥80、3時間で¥120・・・実際操業度125時間で¥5,000これが当月の配賦額です。

この当月配賦額¥5,000から、当月変動予算額¥5,150を引いたものが操業度差異△150(不利差異)です。

あるいは、基準操業度130時間に対し、実際操業度125時間なので、基準より5時間足りない。つまり固定費率@¥30/時間×△5時間=△¥150(不利差異)と考えてもOKです。

▶▶▶次講「個別原価計算とは」へ