標準原価計算の差異分析とは

前講では、直接材料費差異、直接労務費差異、そして製造間接費差異と算出してきましたが、それらの差異はなんで発生したのか?

ここからは、これら3種類の標準原価差異を、さらに細かく、

  • 直接材料費差異は、価格差異数量差異
  • 直接労務費差異は、賃率差異時間差異
  • 製造間接費差異は、予算差異操業度差異能率差異

にそれぞれ分けて、差異の原因をつきとめていきます。これを「差異分析」といいます。

このうち、直接材料費差異と直接労務費差異に関しては、それぞれ単価要因と数量要因に分けて分析します。

まずは、直接材料費差異から見ていきましょう。

直接材料費差異の差異分析の仕方

前講で直接材料費差異を算出した際の計算式を覚えていますか?

直接材料費差異 = 標準直接材料費 ― 実際直接材料費 (算式1)

差異をとるときは、必ず標準から実際を引くんでした。

さて、この「算式1」を単価と数量に分けて考えると、

標準直接材料費=(直接材料費の)標準単価×標準消費量

実際直接材料費=(  〃   )実際単価×実際消費量

と細分化できます。

つまり、

① 単価(価格)に関する標準と実際との差異

② 数量(消費量)に関する標準と実際との差異

の2種類の差異に分けられます。

①を価格差異、②を数量差異といいます。

①の算出式は、

直接材料費の価格差異 = (標準単価―実際単価)×実際消費量

②の算出式は、

直接材料費の数量差異 = 標準単価×(標準消費量―実際消費量)

です。

覚えられますか?

カッコの中はわかりますよね?

価格差異(単価差)は、標準から実際の単価の差額を計算しています。

数量差異は、標準から実際の消費量の差を計算しています。

問題は、カッコの外側です。

価格差異の方は、実際の消費量を掛けています。標準消費量ではありません。

一方、数量差異の方は、標準単価を掛けています。実際単価ではありません。

これをどうやって、正確に覚えるか?

単価差と数量差の順番と覚え方

答えは、直接材料費差異を価格差異と数量差異に分析するときに、先に数量差異から計算することです。

まず、単価は動かさず標準単価のまま、数量(消費量)を、標準から実際にしてその差額をとります。これが、数量差異の算式の意味です。

直接材料費の数量差異 = 標準単価×(標準消費量―実際消費量)

次に、単価を動かします。単価を標準から実際にしてその差額をとります。このとき、消費量は先に数量差異をとった後なので、もう標準消費量に戻さず、実際消費量を使います。

直接材料費の価格差異 = (標準単価―実際単価)×実際消費量

このように、先に数量差、その後に単価差、という順番で分析するやり方は、日商簿記2級商業簿記を学習された方であれば、商業簿記で登場した商品の「棚卸減耗損と商品評価損」と同じです。まず商品の原価のままで数量差である棚卸減耗損をとってから、次に原価を時価に動かして商品評価損をとるんでした。

【参考】期末商品の棚卸減耗損と商品評価損の算式

棚卸減耗損=原価×(帳簿数量―実際数量)

商品評価損=(原価―時価)×実際数量

それでは、日商簿記検定2級本試験レベルの問題で、直接材料費差異を価格差異と数量差異に分析する具体的な解き方をマスターしましょう。

▶▶▶次講「直接材料費の差異分析の本試験問題の解き方」へ