前講では、製造間接費配賦差異の差異分析(予算差異がいくらで操業度差異がいくらか)について、計算式で順を追って解いていきました。

計算式を正確に間違いなく書けるようになればいいんですが、特に最後の操業度差異や予算差異の式を間違えてしまう可能性もあります。

そこで、ここまで計算式だけで解いてきた【設例5】を、ビジュアルにグラフを描いて解くやり方を学習します。

上図のようなグラフ(シュラッター図といいます。)を描くわけですが、いきなりこのグラフを覚えろといっても覚えられないので、こちらも順を追ってグラフを描いていきます。

1.タテ軸・ヨコ軸

まず、タテに金額、ヨコに操業度(本問では直接作業時間)を取ります。

2.予定配賦額(傾き=予定配賦率)のグラフ(配賦線)

次に、予定配賦額のグラフ(配賦線)を描き入れます。

予定配賦率は、1時間当たり¥40。つまり、予定配賦額は、操業度が1時間増えるごとに¥40ずつ増えていきます。2時間(h)で¥80、3時間(h)で¥120・・・

つまり、傾き=@¥40/時間(h)のグラフを引きます。これを配賦線といいます。

ではこのグラフ、どこまで伸ばしていくか。

3.月間基準操業度・製造間接費月間予算額まで

2.の傾き@¥40/時間(h)のグラフは、

・ヨコ軸でいうと、月間基準操業度である130時間(=年間基準操業度1,560時間÷12か月)まで

・タテ軸でいうと、製造間接費月間予算額である¥5,200(=年間予算¥62,400÷12か月または予定配賦率@¥40/時間×月間基準操業度130時間)まで

引っ張ります。

ところで、実際操業度、実際の製造間接費はいくらでしたっけ?

4.当月実際操業度・製造間接費実際発生額(予算差異)

問題文によると、当月の実際の操業度は125時間、製造間接費の実際発生額は¥5,500でした。

ヨコ軸上の125時間のところから、真上に棒を1本伸ばして、¥5,500のところまで引っ張ります。

こうして、予算線(=¥5,200)から飛び出した部分(=¥300)が予算差異です。予算5,200-実際5,500=△300(不利差異)。つまり、300円の予算オーバー。間接費の使いすぎです。必ず、予算から実際を引いてください。

5.実際配賦額(操業度差異)

最後に、配賦線(グラフ)と実際操業度(125時間)から延びるタテ棒との交点を求めます。

傾き@¥40/時間×125時間=¥5,000

これが当月予定配賦額です。

これと、予算(¥5,200)との差額が操業度差異です。

今度は、予定配賦額―予算額です。

つまり基準より5時間操業が足りない分、予定配賦額が少ないという意味です。

このグラフは、下から上を引くわけです。

シュラッター図の描き方・手順を覚える方が面倒に思えますが、慣れてしまえば、式を使って計算していくより間違いが少なく確実です。

さあ、次講は変動予算を使った差異分析をマスターします。

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