製造間接費配賦差異の間違えない出し方

前講で製造間接費の予定配賦額の算出方法は学習しました。

製造間接費の年間予算額をベースにしていても、それを基準操業度で割って実際操業度を掛けて生産の度合いに応じた予定配賦額を計算しても、それでも実際発生額との差異は生じます。

ここで、「製造間接費の予定配賦(予定額<実際額の場合)」の講で学習済みの【設例2】に再登場してもらいます。

【設例2】(再掲)
(1)製造間接費¥5,000を製品Aに¥3,000、製品Bに¥2,000それぞれ予定配賦した。
(2)¥5,000の材料のうち、直接材料として¥3,000、間接材料として¥500それぞれ消費した。
(3)¥10,000の賃金のうち、直接工の直接作業分として¥8,000、間接作業分として¥2,000それぞれ消費した。
(4)¥6,000の経費のうち、直接経費として¥3,000、間接経費として¥3,000それぞれ消費した。

(1)~(4)の仕訳は省略して、ここでは予定配賦額と実際発生額だけに着目します。

まず(1)から予定配賦額は¥5,000でした。

次に(2)~(4)のうち間接材料費¥500+間接労務費¥2,000+間接経費¥3,000で、製造間接費の実際発生額は¥5,500でした。

よって、製造間接費配賦差異は

予定配賦額5,000-実際発生額5,500=△500(△はマイナスの意味)

でした。

このとき、有利差異・不利差異を間違えない鉄則をお教えします。

それは、

「必ず予定額から実際額を引く」

ことです。

この引き算の結果、

プラスになれば有利差異、マイナスになれば不利差異

です。

逆に実際から予定を引かないでください。+-符号が逆になっちゃいます。

この鉄則は、既習の材料消費価格差異、賃率差異や、今後学習する標準原価差異にもすべて当てはまる鉄則なので、ぜひ覚えておいてください。

「予定―実際」

ですよ!

これにより、【設例2】の製造間接費配賦差異は△500はマイナスがついてますから、¥500の不利差異という意味になります。

製造間接費配賦差異の発生原因は?

ところで、これで配賦差異はわかりましたが、経営者に報告すれば「なんでマイナスやねん!?」って返ってきます。

経営者はマイナスをプラスにするのが仕事です(経営者だけでなく会社に所属する従業員全員の仕事でした)。

プラスにするためにどんな手を打てばいいのか?

それにはまず、マイナスの原因を突き止めなければいけません。

ただ単に

「予定配賦額から実際発生額を引いたら、こんなん出ました」

というだけでは仕事といえないのです。

配賦差異の考えられる要因2つ

今回の【設例2】の場合、マイナスの原因は2つ考えられます。

皆さんは何と何か、わかりますか?

「【設例2】の問題文の少ない情報で原因なんてわかるか!」って?

配賦差異がマイナスになる原因は次の2つが考えられます。

1.実際発生額がかかりすぎ

2.予定配賦額が少なすぎ

このどちらか、あるいは両方です。

先の【設例2】の製造間接費配賦差異△500について、うち1.の理由でいくら、2.の理由でいくら、と内訳を算出することを、製造間接費配賦差異の差異分析といいます。

差異分析ができたら、もし1.のように実際発生額のかかりすぎが原因であるならば、コスト削減(節約)の方策をとりますし、2.のように予定配賦額が少なすぎが原因であるならば、もっと操業度を上げるよう、営業強化でもっと注文とってくるような方策をとるでしょう(なぜなら、予定配賦額=予定配賦率×実際操業度で、予定配賦率は年間で決まっているので、後は操業度を上げるしかないから)。

式を使った差異分析の仕方

それでは、配賦差異をどうやって、1.と2.の要因に分解すればいいのでしょうか?

そこを分ける基準として、これも予算を用います。

例えば、前講の【設例4】のように、製造間接費年間予算額が¥62,400だったとしたら、これを12か月で割って、1か月当たりの製造間接費予算は

¥62,400÷12か月=¥5,200/月

となります。

この予算額5,200と実際発生額、予定配賦額を比べます。

まず、実際発生額は¥5,500でしたから、予算額¥5,200と比べて¥300の予算オーバー(つまり使いすぎ)ですね。

次に、予定配賦額は¥5,000でしたから、予算額¥5,200と比べて¥200の予算未達(つまり少なすぎ)ですね。

ここで「予算額5,200―配賦額5,000=プラス200で有利差異」としたら間違い!

もともと

「製造間接費配賦差異=予定配賦額―実際発生額」

の式で、予定配賦額が少ないのか、実際発生額が多いのかという議論でした。

この「予定配賦額―実際発生額」の間に、「予算額」を割り込ませて、

というように、2つの引き算に分解しているのです。

この2つの引き算のうち、

  • 「予定配賦額―予算額」で算出される金額を操業度差異
  • 「予算額―実際発生額」で算出される金額を予算差異

といいます。

先の【設例2】の数字をあてはめると、

つまり、

操業度差異=予定配賦額5,000-予算額5,200=△200(不利差異)

予算差異 =予算額5,200-実際発生額5,500=△300(不利差異)

結局、製造間接費配賦差異(予定配賦額―実際発生額)の△500の原因は、

・予定配賦額が少なすぎ(操業度差異)の要因が△200

・実際発生額が使いすぎ(予算差異)の要因が△300

という内訳が判明しました。

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