前講では、直接労務費の、賃率差異と時間差異の差異分析の仕方について学習しました。
この講では、日商簿記検定2級本試験レベルの問題で、直接労務費差異を賃率差異と時間差異に分析する具体的な解き方をマスターしましょう。
【設例4】 次の資料に基づいて、直接労務費差異を算出し、賃率差異と時間差異に分析しなさい。 |
解き方の手順は、直接材料費差異と差異分析のときと同じです。
【手順1】数量の整理
仕掛品勘定ボックスを直接材料費と加工費に分解し、本問は直接労務費に関する問いなので、加工費ボックスを描き、生産データから数量を整理します。直接材料費のときと違うのは、加工費なので、数量は加工進捗度を掛けた完成品換算量にすることです。
【手順2】標準原価計算
【手順1】でわかった当月投入分の数量に、問題文[資料](2)標準原価カードから標準原価を掛けます。
このとき、製品1個あたり労務費@¥1,500/個を使って、
標準:@¥1,500/個×490個=¥735,000
としないで、標準原価カードの内訳のとおり、直接労務費の標準賃率と標準作業時間の内訳がわかるように、
標準:@¥500/時間×3時間×490個=¥735,000
としておいてください。
答えは同じですが、後で、価格差異と数量差異に分析するときに役立ちます。
【手順3】実際原価との差異(直接労務費差異)の算出
【手順2】で書いた標準直接労務費の計算式のすぐ下に、賃率と作業時間を対応させて、問題文[資料](3)当月の実際直接労務費の式を書きます。
標準:@¥500/時間 ×3時間×490個= ¥735,000
実際:@¥480/時間× 1,500時間 = ¥720,000
差異: +¥15,000
これで直接労務費差異の金額が計算できました。
最後に、この直接労務費差異を、賃率差異と時間差異とに分析します。
【手順4】差異分析
① まず時間差異から。
時間差異=標準賃率×(標準作業時間―実際作業時間)
の算式に、それぞれ本問の具体的な数字をあてはめます。
標準賃率=@¥500/時間、実際作業時間=1,500時間とわかります。
では、標準作業時間はいくらか、わかりますか?
【手順2】で計算した標準直接労務費の算式
標準:@¥500/時間 ×3時間×490個= ¥735,000
の「3時間×490個」つまり1,470時間が、標準作業時間になります。
標準原価カードで、製品1個当たりの標準作業時間が3時間とあるので、この製品を490個製造したんだったら、3時間×490個=1,470時間と計算されます。
直接労務費の時間差異=@¥500/時間×(1,470時間―1,500時間)=△15,000 (不利差異・借方差異)
つまり、30時間余計に時間がかかって、¥15,000分の使いすぎということです。
② 賃率差異
賃率差異=(標準賃率-実際賃率)×実際作業時間
=(@¥500/時間ー@¥480/時間)×1,500時間
=+¥30,000(有利差異・貸方差異)
直接労務費は、作業時間はノルマよりも30時間余計にかかってしまいましたが、時給が20円安くできたので、労務費トータルでは¥15,000安くできた、という意味になります。
ここでも重要なのは、時間差異と賃率差異を合計して、もともとの直接材料費差異と一致するかを確かめることです。
時間差異:△¥15,000+賃率差異:+¥30,000=直接労務費差異:+¥15,000
となりますから、【手順3】で算出した直接労務費差異と一致します。
ここでも、賃率差異と時間差異の算式を覚えられるか不安な方は、次講のとおり図を描く解き方をオススメします。