製造間接費差異はどう分解するか?
前講までの直接材料費差異と直接労務費差異は、それぞれ単価要因と数量要因に分けられました。
しかし、製造間接費差異は、単価と数量の2つではなく、予算差異・操業度差異・能率差異という3種類に差異分析します。
なので、直接材料費差異や直接労務費差異ではなく、以前に学習した製造間接費配賦差異の差異分析を思い出してください。すでに予算差異と操業度差異についてはそこで学習済みです。標準原価の場合は、新たに能率差異が加わります。
標準原価計算における製造間接費差異の算式は、
製造間接費差異 = 標準配賦額 - 実際発生額
です。
以前学習した実際原価計算における製造間接費配賦差異の算式は。
製造間接費配賦差異 = 予定配賦額 - 実際発生額
でした。
能率差異とは
両者を比較すると、そちらも実際発生額を引くところは同じですが、標準配賦額と予定配賦額が違います。この2つをさらに比べると、
標準原価計算:標準配賦額=標準配賦率×標準操業度
実際原価計算:予定配賦額=予定配賦率×実際操業度
となります。このうち、標準配賦率と予定配賦率は同じような意味なので、違いは標準操業度を掛けるか、実際操業度を掛けるかです。
この標準操業度と実際操業度との差異が、能率差異です。
つまり、実際原価計算においては、標準(ノルマ)がない前提なので、どんなにムダに長く作業したとしても、実際の作業時間に予定配賦率をかけた値で製造間接費の予定配賦額が計算されました。
ところが、標準原価計算では、作業時間にも標準(ノルマ)が設定され、その標準として設定された標準作業時間×標準(予定)配賦率分しか製造間接費が配賦されません。
言い換えれば、能率悪く作業時間が余計にかかっても、実際原価計算ではそれだけ仕事した(操業した)とカウントされますが、標準原価計算では、それは能率が悪かっただけ、つまり能率差異のマイナスというように評価されます。
製造間接費差異分析の各差異の算出式
それでは、以前学習した製造間接費の差異分析と同様に、固定予算と変動予算に分けて、それぞれにおける予算差異、操業度差異そして能率差異の算式を示しておきます。
【固定予算の場合】
- 予算差異 =予算許容額―実際発生額
- 操業度差異=標準配賦率×(実際操業度―基準操業度)
- 能率差異 =標準配賦率×(標準操業度―実際操業度)
【変動予算の場合】
- 予算差異 =予算許容額―実際発生額
- 操業度差異 =固定費率×(実際操業度―基準操業度)
- 能率差異(変動費)=変動費率×(標準操業度―実際操業度)
- 能率差異(固定費)=固定費率×(標準操業度―実際操業度)
以上、覚えられましたか?
ムリですよね?
そこで、製造間接費差異の差異分析は、グラフ(シュラッター図)を描いて解くことをおすすめします。