原価計算全体の流れの中の製品別計算

前講までで、材料費・労務費・経費・製造間接費を一通り学習し、ものづくりの流れ的には、製品製造のためにかかったコストが、全て仕掛品勘定に集まってきたところまできました。

ここで、原価計算の4ステップを振り返ってみます。

上記の原価計算の段階でいえば、前講までで、STEP2まで学習し終えたということになります。

個別原価計算と総合原価計算

ここから、STEP3に入っていくわけですが、ここでものづくりのスタイルによって大きく2通りのつくりかたに分かれます。これに従って、原価計算のやり方も大きく2通りに分かれます。

上図にもあるように、個別原価計算と総合原価計算です。

まず先に、個別原価計算の方から学習をしていきましょう。

まずは、上図のSTEP1とSTEP3に着目してください。

STEP1の費目別計算の代表的な仕訳は、

でした。

仮にこの会社が製品Aと製品Bと製品Cという複数の種類の製品を製造していたとします。

仕訳上は上記のとおり、製造直接費はトータルで仕掛品勘定へ、製造間接費も各製品へ配賦計算しますが、仕訳上はやはりまとめて仕掛品勘定へ振替するので、製品A・B・Cの内訳はわかりません。

仕訳上はトータルでいいのですが、経営をする上ではそれでは困ります。原価が分からなければ、製品A・B・Cそれぞれ価格をいくらにして売ればいいのかわかりません。あるいは、お客さん主導の価格で受注した場合でも、製品別の原価が分からなければ、儲けが出るのか赤字になるのかもわかりません。

受注生産と見込生産

ここで学習していく個別原価計算の場合、「個別」つまり製品一品ごとに原価を計算するやり方で、主に受注生産のスタイルの製造業で採用される原価計算の方式です。

受注生産というのは、お客さんから「こういう製品がほしい」という文をけてから、生産を開始するスタイルです。

これに対し、後ほど学習する総合原価計算は、見込生産に主に適用される原価計算方式ですが、見込生産は、注文を受ける前に需要を見込んで先に生産し、在庫を持ってから販売するスタイルです。

例えば洋服。生地を選んで採寸してもらってから仕立ててもらうオーダーメイドが前者。店頭でサイズ別に並んでいる中から、自分のサイズと好みに合わせてチョイスするのが後者です。

前者の受注生産では、お客さんから注文を受ける際に、価格や受注すべきかを判断するために、あらかじめ原価を見積もっておく必要があります。そのうえで、価格や納期などの条件で折り合えば、受注生産を開始します。

製造指図書とは

上記のイラストのように、お客さんから注文を受けた営業は、工場へ生産を依頼(オーダー)します。そこで工場では、お客さんの希望する製品の製造を開始するわけですが、このとき、どういう製品をいつまでにいくつ製造するのかといったことが記載されたドキュメントを「製造指図書」といいます。

工場の製造現場では、この製造指図書の内容に従って、製品を製造していきます。

当然ながら、つくる製品が違えば、製造指図書も違ってきます。というわけで、製品Aは製造指図書№101、製品Bは製造指図書№102、製品Cは製造指図書№103というように、製品別に製造指図書が発行されます。

そこで、「製造指図書№XXX」というのが、各製品を表すことがあります。

日商簿記検定2級の問題でも、「製品A」「製品B」という代わりに、「製造指図書№101」「製造指図書№102」という表現をすることがありますが、それぞれの指図書で製造される製品と思ってください。

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