前講では、原価計算全体の流れの中での製品別計算の位置づけと、製品別計算の方式のうち受注生産方式にマッチした個別原価計算について、その全体像を概観しました。

ここからは、具体的な例を使って、個別原価計算による製品別計算を学習していきます。

直接材料費の個別原価計算表への記入

【設例1】原価計算表への記入
(1)材料¥5,000を掛けで仕入れた。
(2)材料を、製造指図書№101製造のために¥2,000、製造指図書№102製造のために¥1,000、製造用機械の修繕のために¥500それぞれ消費した。

【仕訳】

(1)

(借)材   料 5,000 

/(貸)買 掛 金 5,000

(2)

(借)仕 掛 品 3,000 

   製造間接費  500

/ (貸)材   料 3,500

仕訳にすると、製造指図書№101(で製造される製品)も製造指図書№102(で製造される製品)も、合わせて「仕掛品3,000」になってしまいます。

仕訳とは別に、製品別の原価計算表を使って、製品別の製造原価を計算します。

上記の原価計算表に、製造指図書№101、№102別に原価を埋めていくわけです。まず【設例1】は材料費なので、№101に直課される¥2,000と№102に直課される¥1,000を、それぞれ直接材料費欄に入れます(間接材料費については後述)。

直接労務費の個別原価計算表への記入

【設例2】原価計算表への記入
(3)工員に対し賃金¥10,000を現金で支払った。
(4)(3)の内訳としては、製造指図書№101製造に従事した分が¥5,000、№102製造に従事した分が¥3,000、工場内の清掃に従事した分が¥2,000であった。

【仕訳】

(3)

(借)賃   金 10,000 

/(貸)現 金 10,000

(4)

(借)仕 掛 品 8,000 

   製造間接費 2,000

/ (貸)賃 金   8,000

仕訳にすると、製造指図書№101も№102も、合わせて「仕掛品8,000」になってしまいます。原価計算表に製品別の製造原価を埋めていきます。

【設例2】は労務費なので、№101に直課される¥5,000と№102に直課される¥3,000を、それぞれ原価計算表の直接労務費欄に入れます(間接労務費については後述)。

直接経費の個別原価計算表への記入

【設例3】原価計算表への記入
(5)製品製造に必要な経費¥6,000を現金で支払った。
(6)(5)の内訳としては、製造指図書№101製造のために¥2,000、№102製造のために¥1,000、両製品に共通して発生したものが¥3,000であった。

【仕訳】

(5)

(借)経   費 6,000 

/(貸)現   金 6,000

(6)

(借)仕 掛 品 3,000 

   製造間接費 3,000

/ (貸)経   費 6,000

【設例3】は経費なので、№101に直課される¥2,000と№102に直課される¥1,000を、それぞれ原価計算表の直接経費欄に入れます(間接経費については後述)。

ここまでで、製造直接費(直接材料費・直接労務費・直接経費)について、製造指図書№101(の製品)と№102(の製品)別に原価が、直課により集計されました。

次は、両製品に共通して発生した製造間接費の配賦です。

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