前講では、部門別計算の第2次集計における2種類の配賦方法(直接配賦法・相互配賦法)のうち、日商簿記2級で学習しなければならない、「簡便法としての相互配賦法」とは何か、おおまかな説明をしました。
それでは、日商簿記2級本試験レベルの例題を使って、相互配賦法(簡便法)による解き方を具体的に見ていきましょう。
【設例4】 次の資料に基づき、製造間接費部門別配賦表を作成し、各補助部門費勘定から製造部門費勘定へ振り替える仕訳を行いなさい。なお、補助部門費の製造部門費への配賦は相互配賦法により行う。 |
補助部門費の配賦計算1回目は、直接配賦法のときと違い、他の補助部門への配賦も計算に含めます。
相互配賦法の1回目の配賦計算~動力部門費
例えば動力部門の供給した電力は修繕部門も5kwh使っています。直接配賦法の場合では、これを無視して、製造部門だけの30kwh+40kwhで計算しましたが、相互配賦法(配賦1回目)では、修繕部門にも5kwh分きちんと配賦します。つまり本当の電力消費量トータル75kwhを分母にして計算します。
動力部門費¥3,000(電力供給トータル75kwh)
→第1製造部門へ:¥3,000×30kwh/75kwh=¥1,200
→第2製造部門へ:¥3,000×40kwh/75kwh=¥1,600
→修繕部門へ :¥3,000× 5kwh/75kwh= ¥200
(計算上は、動力部門費¥3,000÷75kwh=@¥40/kwhで配賦率を出しておいてから、各部門の電力消費量(kwh)を掛けていくほうが、計算が速くなります)
相互配賦法の1回目の配賦計算~修繕部門費
次に修繕部門費も同様に配賦計算します。
問題文によると、同じ補助部門である動力部門にも修繕を1回しています。直接配賦法では、この1回分無視して製造部門だけに配賦しましたが、相互配賦法の1回目の配賦の時は、無視せず、動力部門にも、修繕部門費を配賦します。
修繕部門費¥5,000÷修繕回数5回=@¥1,000/回(配賦率)
→第1製造部門へ:@¥1,000/回×2回=¥2,000
→第2製造部門へ:@¥1,000/回×2回=¥2,000
→動力部門へ:@¥1,000/回×1回=¥1,000
相互配賦法の1回目の配賦計算~工場事務部門費
次の工場事務部門費は注意が必要です。
配賦基準となる従業員数ですが、工場事務部門にも5人います。相互配賦法なので補助部門にもきちんと配賦するのですが、さすがに、同じ自部門に対しては配賦しません(自部門に対しては直接配賦法のように無視します)。自分以外の補助部門である動力と修繕の各部門には、事務部門費を配賦します。
すると、配賦のベースとなる総作業員数は、自部門を除いた30人(第1:15人+第2:10人+動力:2人+修繕:3人)で計算します。
工場事務部門費¥6,000÷総作業員数(自部門除く)30人=@¥200/人(配賦率)
→第1製造部門へ:@¥200/人×15人=¥3,000
→第2製造部門へ:@¥200/人×10人=¥2,000
→動力部門へ:@¥200/人×2人=¥400
→修繕部門へ:@¥200/人×3人=¥600
部門費配賦表の見方
上記のように1回目の配賦が配賦表に埋まりました。表の見方ですが、「部門個別費・部門共通費合計」欄のうち、補助部門である動力部門¥3,000、修繕部門¥5,000、工場事務部門¥6,000が、「補助部門費第1次配賦額」欄の動力部門費、修繕部門費、工場事務部門費欄にそれぞれ流し込まれた形になります。
配賦表を左から右に見ていくと、動力部門費は合計¥3,000が、第1製造部門に¥1,200、第2製造部門に¥1,600、修繕部門に¥200に配分されています。修繕部門費、工場事務部門費も同様です。
最後に、今度は配賦表を上から下にみて、動力部門に、他の補助部門から配賦された第1次配賦額を合計した¥1,400(修繕部門から¥1,000、工場事務部門から¥400)を書き入れます。このとき、動力部門の部門個別費・部門共通費合計の¥3,000を足し算に含めないようにしてください(印刷見えにくいですが、締切線が引いてあります)。
修繕部門も同様に、動力部門から配賦された¥200と工場事務部門から配賦された¥600で、合計¥800を書き入れます。
相互配賦法配賦1回目の仕訳
これにて相互配賦法第1回目の配賦が終わりました。
これを、仕訳の形で表すと、
【相互配賦法・配賦第1回目の仕訳】
(借)第1製造部門費 6,200 (貸)動 力 部 門 費 3,000
第2製造部門費 5,600 修 繕 部 門 費 5,000
動 力 部 門 費 1,400 工場事務部門費 6,000
修 繕 部 門 費 800
貸方から補助部門費が他部門に振り替えられて一旦、残高ゼロになりますが、借方で、動力部門費は¥1,400、修繕部門費は¥800、また残ってしまいました。