【設例9】 次の資料に基づいて、完成品総合原価及び完成品単位原価を平均法により計算しなさい。 |
【手順1】仕掛品ボックス
総合原価計算の解き方の手順は、減損の場合と同じです。
減損のときと同様に、貸方側の完成品と月末仕掛品の間に、仕損のスペースを区切って5パートに区分します。
【手順2】数量の整理
これも、減損の場合と同じです。
材料始点投入の直接材料費は生産データの数量(仕損も)をそのまま入れます。
加工費は生産データの数量に、加工進捗度を掛けた数字(=完成品換算量)を入れます。加工費の仕損分も、加工進捗度を掛けた数字を入れます。これは、20個×60%分の加工作業が仕損によりムダになったという意味です。
当月投入分の加工進捗度はわからないので後から逆算します。
念のため、加工品の完成品換算量だけ、以下に算出根拠を示しておきます。
月初仕掛品(加工費):数量100個×加工進捗度50%=完成品換算量50個分
完成品(加工費):数量500個×加工進捗度100%=完成品換算量500個分
仕損(加工費):数量20個×加工進捗度60%=完成品換算量12個分
月末仕掛品(加工費):数量80個×加工進捗度40%=完成品換算量32個分
当月投入分(加工費):貸方合計544個―月初仕掛品50個=完成品換算量494個
【手順3】金額(原価)の計算
数量の整理ができたら、原価データから月初仕掛品原価と当月投入分原価を埋めて、これらの平均単価でまず月末仕掛品原価を計算します。
月末仕掛品原価がわかれば、借方合計から月末仕掛品原価を引けば、仕損費込みの完成品原価が計算できます。
ここから、仕損費の評価額の処理方法です。
本問では、完成品にのみ、減損費を上乗せしました。
ということは、仕損品の評価額の原価からの控除も、やはり完成品だけに対して行います。
【手順4】直接材料費と加工費を、完成品総合原価と月末仕掛品原価に整理
【月末仕掛品原価】
直接材料費:平均@¥175/個×80個=¥14,000
加 工 費:平均@¥741/個×32個=¥23,712
月末仕掛品原価=直接材料費¥14,000+加工費¥23,712=¥37,712
【完成品総合原価】
直接材料費:借方合計105,000-月末仕掛品原価¥14,000=¥91,000
加 工 費:借方合計403,104-月末仕掛品原価¥23,712=¥379,392
完成品総合原価=直接材料費¥91,000+加工費¥379,392
― 仕掛品評価額¥392(@¥19.6/個×仕損品20個)
=¥470,000
(注意)仕損品評価額はお金がもらえるので原価から減らす、つまりマイナス
【完成品単位原価】
完成品単位原価=完成品総合原価¥470,000÷完成品数量500個=@¥940/個
本設問のように、仕損の発生タイミングが仕掛品の加工進捗度よりも後で、完成品にしか仕損の影響を原価に加味しない場合は、ほとんど減損と同じ解き方で、最後の最後に完成品総合原価から仕損品の評価額を減らす、というところだけが、仕損の減損との違いになります。